楽しいはずの釣りで事故など起こしてはならないのであるが、自戒をこめて事故の 記録を残しておきたい。
海川は通常発電所に車を止めて、取水口まで1時間半歩きそこから上流が釣り場である。 途中数百メートルの大絶壁にかこまれた谷沿いにも 岩魚は生息している。
同行のYさんとMさんは山道が谷を横切る地点から釣り登ることにして、私は途中の枝沢を下り、 本谷に降りそこから二人を追って釣りはじめた。大岩がごろごろしており竿をしまわないと 登れないところが所々ある。
ほどなく大型いわなが二匹つれる。とんぼをつかまえて餌にして3匹目をつったところで 山道が谷を横切る地点についた。やがて先行の二人と合流した。
二人とも何匹かのいわなを手にしていた。楽しい気分での昼食後さらに取水口めざして釣り上がった。 一匹を追加したところでYさんの叫ぶ声、いってみるとMさんが岩の上に倒れていた。
一大事発生 !
岩場を巻くときに2mを越える高さの岩から飛び降りて足を骨折した様子であった。悪いことに 雨が降り始めた。一人ではまったく立てない。木の枝とタオルでかかとを固定する。 3人が一緒だったのと時間がまだ早いのだけがたよりであった。
北岳での転落事故が脳裏に浮かんだが、今回はケガをしているのは自分ではない。私は比較的冷静に どうするかを判断した。谷沿いは大岩がごろごろしていて下ることはできない。
右岸の急な傾斜地をとにかく山道めざして登ることにする。激しい雨の中を草をつかみながら 斜面をはったり、手を引っ張ったりしてなんとか山道に這い上がることができた。
そこからザックをYさんに渡しMさんを背負う。重い。55Kはあるだろうか。20〜30歩 背負っては休憩をくりかえし、山道を下ること1時間でやっと徒渉点についた。
周りの大岩壁は雨の水で滝となっていた。なんとか対岸にわたりほっとする。そこからはゆるい昇りが続く。 Mさんを背負って3時間を費やして漸く発電所に到着することができた。
すぐに車で白馬部落へと向かった。幸い診療所がまだ開いており診察してもらうことができた。 診断はかかとの骨がくだけてしまい全治4ヶ月の重傷であった。その後も手術が必要で治るまでは 2年以上を要してしまった。
Mさんは里川での釣りはしていたものの本格的な山岳渓流は始めてであった。また周りが大岩壁なので
高さの感覚をなくしてしまっており2Mほどの高さを飛び降りてしまったのである。
Mさんは2mを越えているとは思わなかったと後で述懐している。
幸い3人一緒だったので自分達だけで搬出でき、他の人の迷惑にはならずにすんだのは 本当に不幸中の幸いであった。
今でも谷に入るときはこの日のことを決して忘れないようにしている。